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キャリアにとって「学歴」はどういう意味があるのか

キャリアにとって「学歴」はどういう意味があるのか

義務教育ではない「高等教育」を受ける意味とは何でしょうか。

社会に出たら使わない知識が相当量ある、卒業したら全て忘れる、ろくに勉強していなくても単位がもらえる…等、「本当に意味があるのか?」と首をかしげざるを得ない状況があることは否めません。その反面、高卒と大卒の生涯賃金の差は5000万円とも言われており(調査によりばらつきあり、例えば:労働政策研究・研修機構、2019:https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/kako/2019/documents/useful2019_21_p314-358.pdf)、また新卒の就職活動においても大学名によるふるい分けがなされていることは公然の秘密であり、「より良い教育を受ける」ことによるキャリア上の恩恵は存在することが明らかです。

このギャップはなぜ存在するのでしょうか。

教育の「人的資本形成」と「シグナリング」

成長
「人的資本形成」とは、端的に言うと「社会や雇用主にとって価値ある人材になること」です。
「シグナリング」または「シグナル効果」とは、「そのものの本当の価値が分からない時に、何らかのシグナルを出すことで価値を連想させること」です。例えば中古車の状態は素人には分かりにくいものですが、型式や走行距離が同じ二台の車で片方の価格が高く、もう片方が極端に安い場合、高い方の状態が良く、安い方は悪いのだろうと判断できます。この時、価格がシグナリングとして機能していると言います。
経済学者であるブライアン・カプランが、教育の「シグナリング」の問題を正面から議論しています(Caplan, 2018)。教育には広く信じられているように、人格を陶冶し知識を涵養する、つまり人的資本としての価値を形成する効果があります。雇用主は人的資本価値の高い人材が欲しいので、高い教育を受けた従業員に高い給料を提示するわけです。
しかし雇用主は実際に働かせてみるまで真の人的資本の価値がどの程度か判断できませんから、そのものさしとして学歴を使います。つまり、学歴が人的資本の「シグナリング」として機能しており、特に高所得の被雇用者(要は高給サラリーマン)ほど学歴が重視されるということになります。
学歴が人的資本のシグナリングとして使われる理由は、一つにはもちろん実際に人的資本を形成しているからですが、それだけではありません。教育課程の中には「真に人的資本形成ではない」部分、つまり実社会では実際に役に立たない部分も多くあります。また卒業した後には学んだことのほとんど全てを忘れてしまうことが分かっています。「学校で学んだこと一切を忘れた後に残るものが教育だ」とアインシュタインは名言を残しましたが、そもそも教育課程でなくても、例えば大学に通う代わりに早くから社会に出て働くことで身につく価値あるものも当然あるはずです。それでも学歴が重視されるのは、学位を得るまでの期間勉強する忍耐力、そして学位で評価される世の中で周囲に歩調を合わせる協調性、といったものを持っているというシグナリングにもなるためです。高い学歴を持つほど強いシグナルとなるわけです。
ちなみに本題から外れますが、カプランは、教育のうちどの程度が人的資本形成でありどの程度がシグナリングかという分析を行い、驚くべきことに、概ね人的資本2:シグナリング8であると述べています。但しカプラン自身の感覚としては3分の1程度がシグナリングだとも言っていますが、これはカプランが教育業界でキャリアを積んでいる「現在の学校教育に恩恵を受けている」人材だからかもしれない、と述べています。そして、教育業界で発言権のある人間はおしなべて「現在の学校教育における成功者」なので、既存システムの維持に肯定的になるモチベーションがあることを指摘し、教育システム構築の意思決定にバイアスがかかっていることを示唆しています。

参考文献:
Caplan, Bryan. 2018. THE CASE AGAINST EDUCATION. Why the Education System Is a Waste of Time and Money. Princeton University Press. (邦訳:ブライアン・カプラン. 2019. 大学なんか行っても意味はない?教育反対の経済学. みすず書房)

「リカレント教育」と「転職するキャリア」

リカレント教育とは、従来の学校を卒業したら就職、という一方向の流れ(current)ではなく、働き始めて数年して大学や大学院に進学、そしてまた仕事に戻る、という一方向だけでない、教育の繰り返しの流れ(recurrent)のことです。この言葉には「現職を辞める」というニュアンスがあるため、企業は「リスキリング」という言葉の方を好んで使います。
前項で述べた「人的資本形成」の観点からは、大卒を新卒採用しようが、新卒採用した高卒が後から社会人向けプログラム等で大卒になろうが関係ないはずです。しかし実際には、例えば高卒で新卒採用された方が後から大卒になっても、同じ会社で大卒待遇になるのはあまり一般的ではないようです。もちろんそういうケースも皆無ではありませんが、特に古い体質のJTC(日本の伝統的な会社)ではリカレント教育後にも特に待遇を変えない傾向にあるようです。例えば2016年の調査で、大学院修了後の従業員の処遇に変化があった企業は22.7%に過ぎません。更に企業規模301人以上の大企業ではその割合が13.7%と顕著に低くなります(文部科学省, 2016)。何故なら新卒採用というのは「一般的なレールに乗っている人材」を必要としているからで、そのシグナリングが機能するのは「新卒時点のスペック」だからです。年功序列・終身雇用が染みついているJTCにとっては、キャリアは「会社が与えるもの」ですから、従業員が勝手に自分のキャリアを追求し始めると取り扱いに困るわけです。なので、あくまで現行のキャリアの枠内でのスキルアップ「リスキリング」を推奨します。
「シグナリング」の観点からは、転職市場のほうがリカレント教育を評価します。リカレント教育は、高卒が大卒に、学士(大卒)が修士に、修士が博士にと、まさしくキャリアアップのための流れであり、「自分で道を切り拓く意志を持つ」というシグナリングとして働きます。従って、そういった人材を必要としている雇用主に対するアピールは、一般的なレールに乗ってきた新卒人材よりも強いと言えるでしょう。

参考文献:
文部科学省(2016)「文部科学省 平成27年度「先導的大学改革推進委託事業」社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究 別冊」平成28年3月 イノベーション・デザイン&テクノロジーズ株式会社

文部科学省 平成27年度「先導的大学改革推進委託事業」社会人の大学等における学び直しの実態把握に関する調査研究 別冊(2024年3月3日アクセス確認)

「人的資本形成」のためのリカレント教育

オンライン学習
シグナリングが働くからといって、何でもやみくもにやればいいわけではありません。極端な話、IT業界で営業のプロフェッショナルになりたいのに公認会計士の資格を取っても、「やる気と能力はあるが、行動が的外れ」という判断をされるでしょう。これが、知財関連なら弁理士、のように分かりやすい資格がある場合はいいのですが、個々人のキャリアはバリエーションに富んでおり、カバーする資格の類がないことも往々にしてあります。例えば東南アジアの工業用化学品市場を新規開拓するプロフェッショナルのための資格や、IT業界で女性の活躍を推進するための資格はありません。その点「経営管理学」という分野は極めて汎用性に富んでおり、凡そビジネスに関わるものは全て含むことができます。従って、高卒の方が大卒(学士)を目指すにせよ、学士の方が修士・博士を目指すにせよ、「人的資本形成」という面では経営管理学をやっておけば少なくとも「ハズレ」はないと言えます。
経営管理学でいう修士、MBA(Master of Business Administration)はGeneral Management、つまり一般的なビジネス管理についての知識を身に着けるレベルとなります。したがってMBAまではジェネラリストです。博士であるDBA(Doctor of Business Administration)まで取るとジェネラリストではなくスペシャリストの道が拓けます。経営管理学は戦略・マーケティング・財務会計・組織・教育など様々なサブカテゴリーがあり、それぞれについて更に細分化した研究(例えば、「北米の自動車製造業における新入社員教育の歴史的推移」や「フィンテック企業の越境M&Aにおける財務戦略」など)をすることになります。そのため、非常にニッチな分野に関する「知」をも博士論文の形で世に送り出すことができます。博士論文は学術誌等にも掲載され、当該分野のプロフェッショナルとして世界に名前が出ますから、国家資格よりもよほど強力なプロフェッショナルキャリアのバックボーンとなります。
逆に、単に「勉強しました」というのは、シグナリングを考えるとほとんど意味がありません。学位、つまり学士・修士・博士を取らないと適切な評価になりませんから、どんなに自分で頑張ったと思っていても、受けるだけのセミナーや難易度の低い民間資格に大した意味はないのが現実です(もちろん、難易度の高い国家資格の場合にはその限りではありません)。

高卒から最短6年で博士になる方法

一分野のプロフェッショナルたる博士号ですが、当然のことながらそう簡単には取れません。そもそも、一般的に博士課程に進むには修士号が必要ですし、修士課程に進むには学士号が必要です。従って現在最終学歴が高卒の方の場合、まず四年制大学を卒業(=学士号を取得)し、それから二年間の修士課程に進み、修了したらようやく博士課程です。通常は学士と修士だけで6年かかります。そして一般的な博士号であるPh.Dでは、最短3年ですがなかなか簡単に修了しません。5年も6年もかかったり、更にはとうとう論文が通らずに単位取得退学となったりすることも珍しくありません。
しかし海外に目を向けると、高等教育の制度は国によって様々です。特に社会人向けのリカレント教育プログラムでは、効率良く組み合わせることで、期間を最小限にすることができます。例えば、弊社の取り扱うアングリア・ラスキン大学(ARU)の社会人向け学士プログラムは最短二年半で卒業でき、またカリスマ大学MBAは最短半年ですから、高卒からMBA取得までは三年という、一般的な学士・修士課程の半分の期間で可能です。博士課程のDBAだとさすがに三年はかかりますが、Ph.Dより実務家向けの学位のため、取得のハードルが比較的低いと言えます。
カリキュラム的には、ARU学士プログラムでは、ビジネスにおける原則を理解し経営理論と現実社会での実践を探求することが主眼になります。カリスマ大学MBAではこれまでの学習者の職務経歴と経営管理の各分野がどのようにリンクするかを示し、最後にツインテックDBAで新しい「知」を世界に認められる形で論文に書き上げることになります(詳細は各プログラムのページをご覧ください)。
職歴と並行して学歴を積み重ねることで、世界に通用するオンリーワンのキャリアを構築することができます。弊社では、高卒・大卒・修士持ちの方それぞれに向けたプログラムがあり、お好きなタイミングで開始できますので、是非一度お問い合わせください。

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